2025年度会員社アンケート調査

「危うさを強く意識」今回のアンケート結果での率直な感想です。

一般社団法人全日本テレビ番組製作社連盟(以下略ATP)101社(全体約85%)にご協力を頂き貴重な経営分析ができました。

ATPのベースとなるテレビ製作会社(100億円未満)の売上高は、13.5億円(前年比103.95%) 営業利益2,808万円(前年比77.08%)となりました。下記のデータでも明確ですが、営業利益が減少している社が増加しております。営業利益の減少は制作現場の物価高、人件費の高騰などにより悪化しているのでしょうか、製作会社の経営は厳しい環境にあることが見て取れます。

総務省の「放送・配信コンテンツ産業を取り巻く現状と課題」によると、コンテンツ産業全体は成長していますが、テレビ番組製作会社の売上の推移は並行であり強い上昇を感じられません。売上の上昇が無ければ、物価高や人件費への対応ができません。つまり価格転嫁が機能していないのです。

アンケートにもありますが、一部人件費の価格転嫁はわずかながら反映されているようですが、制作原価などの上昇分は転嫁できていません。大阪では管理費さえも認めてもらえないケースがあるようです。

製作会社の主なクライアントはテレビ局であります。そのテレビ局の番組制作費を参照して明白なのは、番組制作費はほぼ増加していません。つまり価格転嫁できない環境へと変化している可能性があります。またNHKも減波の影響で製作会社の受託できる機会喪失や、受信料の減少により制作費が上昇するとは考えられません。しかし、日々の人件費や制作原価の上昇は待ったなしです。製作会社がどのように対応すべきか、悩みは深刻です。価格転嫁できない状況をどのように経営判断すべきでしょうか。

売上の構成比を見ると、テレビ番組製作会社の売上の7割はクライアントである各テレビ局です。コンテンツ産業全体のマーケットは成長している現状と価格転嫁できない状況を考慮すると売上の構成比「配信」「その他」などが増加すべきです。アンケートの結果では多少の伸びは感じられるものの、コンテンツ業界全体での成長とシンクロしているとは思えません。逆に言えばテレビ番組製作会社以外のコンテンツ制作者が、配信系のコンテンツ産業の受け手(受託者)になっているのでしょう。この現状は5年後10年後の製作会社の発展のためにも手立てが必要ではないでしょうか。

海外展開も重要なポイントです。しかし小さな製作会社単体では難易度が高いのが現状です。高市政権が2033年にコンテンツ産業の海外市場規模を20兆円とする目標を掲げています。

日本一のテレビ製作会社集団ATPとアクションを起こし、未来のコンテンツを支えるクリエイターの支援に繋げたいものです。

今回のアンケートでは2年連続のテレビ製作会社の経常利益の悪化も明らかになりました。

全体で連続赤字が13.4%となりました。連続赤字が続けば倒産します。内部留保でのキャッシュフローがなくなり、銀行の融資は連続赤字では受けることはできません。

さらに悪いことに連続赤字が増加しています。昨今、コンテンツ製作会社の倒産が増加しており、危機感を感じます。

テレビ制作の現場は我々テレビ製作会社のスタッフが9割といっても過言ではありません。このテレビ番組の未来を作るのはコンテンツを創造するクリエイターです。

テレビ番組制作者の皆様には、このアンケートを活かして未来への準備にしてもらいたいです。そして総務省やNHK、民放テレビの皆様、そして関係者の方々に、製作会社の現状をご理解頂き、引き続きご支援を承りますよう心よりお願い申し上げます

2026年1月
一般社団法人全日本テレビ番組製作社連盟

テレビ番組製作会社経営情報調査研究会
座長 伊藤 慎一

2025年調査概要

実施時期 2025年9月20日~10月9日
対象年度 2024年度
調査対象 ATP正会員社(アンケート実施時の会員社数120)
101社(回答率84.2%)

2025経営情報アンケートが語る製作会社の課題と展望

監修 上智大学教授 音 好宏

ATPは、2024年に経営情報アンケート研究会を立ち上げ、それまでATP会員社を対象に行ってきた経営調査をリニューアルして、さらに精度の高い「経営情報アンケート」をスタート。今回取りまとめた「2025年経営情報アンケート」は、リニューアルをしてから2回目の調査ということになる。
昨年の「2024年経営情報アンケート」に続き、今回の「2025年経営情報アンケート」でも、放送局の経営環境の悪化に伴うコストカット、制作費の圧縮の影響、働き方改革による人件費の高騰を受け、製作会社の6割近くが売り上げを下げ、製作会社の経営環境が厳しさを増していることが読み取れる。

日本経済の長期低迷に加え、メディア利用におけるSNSの普及や、NetflixやYouTubeなど動画配信事業の伸張に伴うテレビ視聴のCTV(コネクテッドTV)化などを受け、テレビ放送事業者の経営環境が厳しさを増し続けるなかで、放送事業者の番組制作費の圧縮が続いている。ATP加盟の製作会社の多くは、その営業利益のなかで放送局との取り引きが占める割合が高い。放送局の番組制作費の圧縮は、製作会社の経営に直接影響することになる。この放送局の番組制作費の圧縮が続くと、取引先である番組製作会社の経営にボディ・ブローのように効いてくる。
周知の通り、ATP加盟の製作会社においては、社によって資本関係や主たる業種・業態に違いが少なくないため一概には言えないが、事業規模の大きい会社と小さい会社とでは、よりサイズの小さい製作会社の方が経営環境は厳しく、事業規模による格差が拡大傾向にあることが推察される。また、今年の調査では、回答数が増えたこともあり、製作会社の地域間の比較なども行っているが、東京の製作会社と大阪を含むローカルの独立系製作会社との間で、経営環境の厳しさが顕在化していることが見て取れた。放送事業の経営環境の悪化が指摘されて久しいが、特にその傾向が顕著なのはローカル民放局とされている。このローカル民放局の経営環境が厳しさを増していることが、地方の製作会社の存立基盤に暗い影を落としていることが見て取れた。

行政機関等から「働き方改革」の一環として、社内の労働環境の整備が強く指導されるなかで、放送事業者内の環境整備のしわ寄せが、外部発注先である製作会社の現場に及んでいることが類推できるデータが少なからずあった。その延長線として製作会社にとって大きな課題となっているのが、恒常的な人材不足の問題である。前年調査でも指摘されたが、製作会社の多くが、新人の確保に苦労していることが見て取れる。今回のアンケート結果で注目すべきは、製作会社に対して新卒の応募が0の社が増加するとともに、番組単位の契約のスタッフが増加傾向にあることだ。
総務省などで開催されている日本の映像コンテンツ産業の活性化に向けた議論において、今後のカギとされているのがコンテンツ製作に携わる優秀な人材の確保・育成である。しかし調査からは、制作現場において、AD不足が慢性化し、労働力確保に苦労している様子が浮き彫りになっている。加えて、せっかく確保できた人材をスキルアップさせていくための育成の場が十分に提供できていない状況にある。
このような状況への対処は、個々の製作会社が単体で行うのみならず、業界をあげた取り組みも必要であろう。また、行政による政策的な支援や環境整備など、早急に進めるべきであろう。

特に2025年に、放送界の信頼を大きく揺るがしたフジテレビ問題は、日本の放送界における人権意識やコンプライアンスに対する認識が改めて問われることとなった。総務省の検討会の議論等を経て、民放連では自主的な検討組織を設置するとともに、放送現場の意識向上に向けた取り組みに向きあいつつあると聞く。放送現場を担うことの多い製作会社においても、現場スタッフの人権意識やコンプライアンス意識を醸成し、クリエイティビティを高める職場環境を形成していくことが求められているし、増加傾向にある契約社員・派遣社員を含めた意識醸成の場を設けていく必要があるのではなかろうか。

アンケート調査では、2024年度の製作会社の著作権保有率は、「NHK地上波」で7.7%、「民放地上波」で7.0%と、いずれも前年を下回る数値となった。「NHKBS」、「配信(ソーシャルメディア)」では前年を上回る数値となったものの、製作会社が制作に関わる映像コンテンツにおいて、その権利を得られず、その著作権確保比率の低い状態は、地上波を中心により顕著になっている。
総務省では、放送コンテンツの適正な製作取引を推進するため、「放送コンテンツの適正な製作取引の推進に関する検証・検討会議」を定期的に開催し、「放送コンテンツの製作取引適正化に関するガイドライン」を、継続的に見直し、改定を行ってきた。同検証・検討会議においてATPは、継続的に「発意と責任」に基づいた製作会社の知的財産権の確保を主張してきたのは周知の通りである。製作会社をはじめとする放送コンテンツの作り手が、発意と責任に見合った権利を獲得できる環境を整備していくよう政策的な支援も含め、働きかけを継続していくことが求められよう。
他方で、この検証・検討会議の立ち上げ当初から座長を務められ、日本の映像コンテンツの製作取引のあり方に関する議論を、経済法の専門家のお立場からリードされてこられた船田正之・立教大学名誉教授が退任され、新座長に石岡克俊・慶應義塾大学教授が着任するとともに、同検証・検討会議についても、その検討事項として、新たに「放送コンテンツの製作に係る就業環境の適正化のために講ずべき措置」が加えられた。
先に触れた放送事業者のガバナンスの議論、コンプライアンス意識向上の議論は、映像コンテンツを製作し、放送事業に供する製作会社にも通ずるものである。適正な製作取引の推進とともに、その就業環境の健全性は製作会社の現場にも求められている。

アンケート調査では、2024年度の製作会社の著作権保有率は、「NHK地上波」で7.7%、「民放地上波」で7.0%と、いずれも前年を下回る数値となった。「NHKBS」、「配信(ソーシャルメディア)」では前年を上回る数値となったものの、製作会社が制作に関わる映像コンテンツにおいて、その権利を得られず、その著作権確保比率の低い状態は、地上波を中心により顕著になっている。
総務省では、放送コンテンツの適正な製作取引を推進するため、「放送コンテンツの適正な製作取引の推進に関する検証・検討会議」を定期的に開催し、「放送コンテンツの製作取引適正化に関するガイドライン」を、継続的に見直し、改定を行ってきた。同検証・検討会議においてATPは、継続的に「発意と責任」に基づいた製作会社の知的財産権の確保を主張してきたのは周知の通りである。製作会社をはじめとする放送コンテンツの作り手が、発意と責任に見合った権利を獲得できる環境を整備していくよう政策的な支援も含め、働きかけを継続していくことが求められよう。
他方で、この検証・検討会議の立ち上げ当初から座長を務められ、日本の映像コンテンツの製作取引のあり方に関する議論を、経済法の専門家のお立場からリードされてこられた船田正之・立教大学名誉教授が退任され、新座長に石岡克俊・慶應義塾大学教授が着任するとともに、同検証・検討会議についても、その検討事項として、新たに「放送コンテンツの製作に係る就業環境の適正化のために講ずべき措置」が加えられた。
先に触れた放送事業者のガバナンスの議論、コンプライアンス意識向上の議論は、映像コンテンツを製作し、放送事業に供する製作会社にも通ずるものである。適正な製作取引の推進とともに、その就業環境の健全性は製作会社の現場にも求められている。

そのためにも、まず実態の把握と、そこに連なる構造的な問題の明確化。そして、関係者間の連携による解決策の検討が不可欠である。今回の経営情報アンケートの結果は、現在、製作会社が置かれた状況、直面する課題の一端が浮き彫りになったことは確かである。また、フリーアンサーからは、制作現場が抱える具体的な問題や悩みといった生の声を拾うことができた。このようなアンケートを重ねることが、実態の解明と課題解決のための今後の対応策を見つける手がかりとなることは間違いない。

2025年度調査のトピック
1.製作会社の収益悪化が顕在化、3割を超える社が赤字に

番組制作費は横ばい、赤字計上の社の割合が増加

2.番組制作における価格転嫁が困難な構造が浮き彫りに

物価が高騰する中、価格転嫁が進まず収益を圧迫

3.業界全体で新人確保が難航

優秀な人材確保は業界全体の課題に

4.依然として低い著作権保有率

全体の著作権保有率は下落、配信での著作権確保も進まず

5.製作会社の今後

依然として低い管理費と今後の影響が懸念されるNHK減波、配信への期待